2014年5月18日日曜日

井出遥也 がフクアリで跳んだ!(第14節コンサドーレ札幌)

  ゲームの最初でいいプレーをした選手は、やはり活躍する確率が高まる。この試合のヒーローだった井出遥也の最初のプレーは、7試合目の出場で初めてといっていいほどに、才能に満ちあふれたものだった。開始早々に札幌の押し込まれて嫌な雰囲気になりそうな中で、相手に囲まれつつも浮き球で大塚翔平を走らせたパスから決定的なチャンスを作った。この1本の美しいパスがジェフと井出に完全にスイッチを入れたように見えた。

  井出の芸術的パスに刺激を受けた、天才肌の谷澤と大塚が次々と相手の裏を狙うパスを通す。ガンバの二川選手がピッチに3人もいるぞ!と錯覚するような「3Dパス」が乱れ飛ぶ。これではいくらフィジカルで上回る堅守の札幌DF陣もガタガタに・・・。過去数年、札幌相手には「完封負け」のイメージがつきまとっていたが、前半34分に見事な谷澤の「3D」から井出が決める!去年までは田中佑昌が何度となく決めていた形だけど、おそらく今年初の裏への飛び出しゴールだったように思います。中村のクロスにファーで谷澤がスーパーボレーというのはありましたけど・・・。

  今年のジェフは山中のスーパーミドルに始まって、谷澤のループ、大塚のループと絵になるスーパーゴールが例年よりも多い印象ですが、やはりこの井出のJ初がゴールのような完璧なコンビネーションゴールこそが、チーム力を象徴するんじゃないかと思います。一昨年まで在籍した藤田選手(現横浜マリノス)が兵働選手のパスからゴールを量産した木山サッカーは、当時のJ2では屈指の強さを持っていたのが懐かしいですね。

  チャンスこそ作ってもなかなか得点につながらない攻撃は心配ですが、この試合では最後まで守備陣は集中力を切らすことなく、これまで幾多のミスを重ねて来た右サイドも右SBに大岩でCBにキムヒョヌンという布陣で完全にシャットアウトしていました。ただし今日に関しては札幌にキレのある動きをする選手が少なかった部分もあるので、今後の試合が試金石になっていくでしょう。前線の選手が次々とチャンスを作るので、配給役に徹した兵働が「ジェフのピルロ」と言える安定感を誇っていました。

  ボランチにフィジカルのある選手を求める声が多いようですが、やはり「上手い」選手が務めることで、チームのバランスはさらに良くなりますね。大塚・谷澤・井出といった技巧派を揃える2列目にとっては早いタイミングでボールを送ってくれる兵働の出来いかんで輝きが変わってきます。もちろんもう一人の佐藤健太郎も前節に続いて好調をキープしていて、抜群の安定感のつなぎをこなしました。

  最後に待望の追加点を演出した大塚が好調のチームを象徴しています。90分を通してほとんどミスは無かったですし、ケンペスへのアシストも今シーズン2点目で、ケンペスを上手く使える選手として森本や町田をリードしています。そして谷澤も兵働もトラップの上手い大塚とのプレーはとても楽しそうな様子で、チームにとても良い影響を与えています。他にも町田・山中・ナムスンウといった技巧派との連携も今後は期待できそうです。

  さて次節はケンペスを出場停止で欠く横浜FC戦です。田中を代役に立ててのスタメンが予想されます。それでもベンチに町田・山中・ナムスンウの豪華3本立てなので、特に影響なく闘えるのではないでしょうか。「0トップ」による激しいポジションチェンジと「3Dパス」が乱れ飛ぶエキサイティングな試合を期待したいです。


ジェフ2−0札幌   井出、ケンペス(ジ)

佐藤健太郎 の調子が上がってきたぞ! (第13節モンティディオ山形)

  今年のジェフは何かが違う。4年連続で昇格を逃してきても尚、J2屈指の戦力の戦力と言われてきたが、選手達が自信を失っているようなシーンが多く見られるようになった。J2を史上最強のペースで快走する湘南に0-6で敗れた時だけでなく、他の試合でも自信を喪失しているかのようなプレーが目立つ。

  去年まではほとんどの試合のほとんどの時間で、試合終了まで勝利の可能性を見る事ができた。しかし今年は・・・残念ながら開始10分で早くも焦りが見え始め、さらにそこからミスが続くと、「敗色濃厚」な雰囲気さえ漂い始める。応援している側も「負けてもいいから思い切ってやれ!」みたいな声を発したくなるほどだ。

  開幕からメンバーが固定できず、連携面でのチグハグさがチームの自信を失わせていた。去年は中盤より前の選手では、ケンペスと佐藤健太郎が不動のレギュラーだったわけだが、今年はどちらも開幕からコンディション不良。これでは去年の「何となく手堅い」「どんな相手にも力負けしない」といったジェフの良さが感じられないのも仕方のないことだろう。

  ただ幸いな事に、去年のチームの顔だった米倉の穴は中村太亮が見事に埋めてくれた。彼のサイドでの安定感にチームは救われている。去年まで在籍した古巣・山形を相手にこの試合でも見事な存在感で左サイドを制圧し、さらには見事な先制ゴール(恩返し弾)まで奪った。相手チームも対策が進んでいて、最近では中村がボールを持つと2人で獲りに行くシーンが目立つ。比較するのは少々失礼だが、昨年の左SB高橋峻希よりもボールを持ったときのプレーの幅は広い。その一方で守備力は高橋の方が上だった気もするが・・・。

  この試合の中村はいつも以上に気合が入っていた。そして佐藤健太郎も古巣相手に闘志を燃やしていた。勝てなかったことは残念だが、内容は今シーズンでも1、2を争うほどに良かった。最近になってゴールが増えたケンペスと佐藤健太郎が復調したことで、「手堅い」ジェフが戻ってきた印象だ。そしてスーパーサブの町田也真人も良かった。なかなか入って最初のタッチであんなスゴいパスを出せる選手はいない。間違いなく天才だ。終盤で得点が欲しい時に、町田と大塚翔平が共存したらかなりの破壊力が期待できる。パスとトラップの技術ならばJ1の選手にも負けないレベルだ。この2人が狭い所でもお互いにパス交換をすれば相手DF陣も浮き足立つから、ケンペスにチャンスが増えるはずだ。ジェフにとっては悔しい引き分けだったけれども、チームとして大いに自信を深められる一戦だったと思う。


山形1−1ジェフ  比嘉(山) 中村(ジ)

2014年5月11日日曜日

2点先制されてから始まるサッカーなんて・・・(第12節FC岐阜)

  こんな言い方してはいけないですが、これはこれで「面白い」! 相手に2点のハンデを上げる・・・そこから追い上げるのが、これ以上ないくらいにスリリングで見ていて最高に面白いです。2試合連続して2点を献上しましたが、さすがに3点目はマズいとばかりに大岩や岡本の表情が引き締まります。そこから2試合合計で5ゴールぶちこんで反撃したわけですが、大塚の美技ゴール以外は外国籍選手によるもの。連戦の疲れもあってか谷澤・兵働の2枚看板は相手を圧倒するほどの集中力をなかなか発揮できず・・・それでも相手を押し込む底力はまだまだありますね。

  オサスナやマジョルカといったスペインリーグで下位のチームに2点先制されたレアルやバルサが取り返しにいくくらいの迫力があります。2点先制されているのに、不思議と負けている気がしないほどに連続して繰り出される波状攻撃。追いつくのも時間の問題だろうというヘンな確信すら起きる。そういえば去年もこんな後半全開のサッカーをやっていた時期があったっけな。これこそが鈴木サッカーの神髄なのかも!?追いついて逆転したときに感じる「カタルシス」はファンとしては至上の喜びなのは間違いない。

  さて今節は最後の最後で森本が決めていればシナリオ通りだったのですが、セリエAでゴールを量産した時代が遠く霞むような幕切れでした。残り5分で登場したナムスンウもちぐはぐなパスミスを連発して、ちょっと水を差したかも。もはや相手DFはギリギリだったのだから、早いタイミングで森本とケンペスに50:50のボールを供給すれば、空中でもグラウンダーでも競り勝ってくれそうな予感で、監督もナムスンウのダイレクトパスに期待していた節もあったと思うのですが、結局2回のタッチでボールロスト2回という残念な結果に終わってしまいました。今季初出場で残り5分の出場ではやむを得ないですが・・・。

  前節の群馬も今節の岐阜も後半にチームの戦闘力が大きく落ちていたわけで、このレベルの相手を確実に仕留められないのは「大問題」だと思います。去年までのジェフならば大差で2連勝していたでしょう。J2での二桁順位という未知の領域でさまよい続けるチームを牽引して、プレーオフ圏内へ導いてくれるのは誰か?できれば2位になってくれると有り難いですが・・・。

  さて次節はモンテディオ山形とのアウェーゲームです。今季から新加入したJリーグではおなじみのディエゴが、チームの中心となって躍動していて恐いです。これまでの相手には見られなかった個の力がみなぎるディエゴを誰が止めるのか? 田中佑昌とキムヒョヌンが2人がかりで行っても止められるのか? 今回もまた2点献上してしまったら、やや苦手意識がある山形が相手のアフェイですから、選手が意気消沈してしまいそうな予感。こうなったらナムスンウを先発させて、なにが何でも先制点を目指すしかないか・・・・。


岐阜2−2ジェフ  得点者 比嘉・田中 (岐)   ケンペス2(ジ) 

  

  

  

2014年5月4日日曜日

中村太亮 と キムヒョヌン の熱いハートに最敬礼!(第11節ザスパクサツ群馬)

  例年、GWの連戦は成績を落とし易いジェフ。しかし今年はJ25年目にしてとうとう「成績を落とす」という表現すら使えなくなってしまいました。懐かしい秋葉監督率いる群馬はローテーションなのか成績不振でのメンバー変更なのかわかりませんが、コンディションはそこそこ整っている様子。ジェフ時代は右サイドにスポット起用されることが多く結果を残せなかった青木考太が、連戦の疲労か動きが緩慢な大岩を軽く振り切って先制される・・・また「お礼参り」か。再三のチャンスを決められないまま、逆に青木に決められたショックでジェフの動きが急激にトーンダウン。

  さらに青木のチャンスメイクからもう1点奪われ、画面に大写しにされる山口(智)、谷澤、兵働の暗い顔。しかし「青木考太って誰やねん!」といった感じの両SBが2分後に1点を返す!完全にこの1点でチームは甦りました。FKキッカーの中村太亮とJ初ゴールのキムヒョヌン。「兵働のキックをケンペスの頭」ではなく、「中村のキックをキムの頭」これが今後のジェフの生命線になりそうです。まあ兵働の右CKも精度の高いいいクロスなんですけど。

  今日2アシストの中村太亮はこれまでのところチームの得点のほとんどをアシストしていまして、去年アシストを積み重ねた米倉を凌ぐペースで見事に穴を埋めています。新加入でまだシーズンの「前半の前半」ですが、完全にチームの「中枢」になってますね。FKのキッカーだけでなく、ダイナミックなフォルムでのドリブル突破もチームで1、2位を争うほどの切れ味! 谷澤・山中・井出といったジェフ自慢のドリブラーに全く劣りません。今後は左SBながら相手から厳しくマークされる存在になりそう、もし中村に怪我でもあれば今シーズンのジェフは「完全終了」でしょう。

  重苦しい雰囲気を打ち破る大殊勲のゴールを奪ったキムヒョヌンも、これで憑き物が落ちて大化けしてくれそうな予感があります。身体能力の高さはジェフDF陣でもナンバー1ですし、今日も押せ押せムードの後半に何度か喰らいそうになった相手のカウンターを後ろから追いついて潰していました。山口(慶)キャプテン不在だとカウンターを気迫で止めてくれるタイプがいなくなるので、キムの存在は大きいですね。去年はJリーグのファウルの基準がよくわからないで激しいチャージに行って退場なんていうシーンもあり、不安定さがありましたが、2年目の今年はかなり適応している印象です。

  そしてやはり触れなきゃ行けないのは、同点ゴールの大塚翔平ですね。彼の美学が爆発したような「プロフェッショナル」なゴールを決めてくれました。谷澤・田中・町田・井出を見ていて物足りない「なにか」をサポーターにはっきりと解らせてくれるゴールでした。前節までの10試合でこの4人がこんな形で何度チャンスを得ていたか・・・それぞれ1回や2回じゃないと思いますよ。兵働がボランチに君臨すれば、やはりこういう形がかなりの頻度で作れるわけです。大塚はそれを1チャンスで決めてみせた!

  もちろんチームのバランスもあるでしょうけど、他の誰も持っていない能力を簡単に発揮できる選手をベンチ・ベンチ外に置き続けた首脳陣はやはり「反省」すべき。こんなゴールを決める選手がいれば相手も守りにくくなりますし、ケンペスや森本と組ませれば「シャドー」としてゴールを量産してくれそうです。中村のクロスにケンペスや森本が合わせ、そのこぼれ球を大塚!なんてシーンがジェフのゴールパターンとしてかなり強く想像できるのですが・・・。

  さて次節は岐阜です。タイトな日程ですがなんとか連勝でGWを終えて欲しい!ケンペスもゴールして気分が良くなっているでしょうから、スタメンは悩みどころ。田中を外して大塚だと守備面に不安が残りますし、森本も前線での守備を考えると外せなくなってきました。本人もなんとかゴールを決めたいと必死になっているでしょうから、もう1度チャンスを上げてほしい。谷澤・兵働も疲労度合にもよりますが、彼らのクリエイティビティあって大塚が生きる展開なので外せず・・・。やはりスーパーサブかな。もう一人の隠し球ナムスンウの復帰と、ここ数戦をベンチで試合を見た町田の才能と奮起にも期待したいです。


ジェフ3−2群馬  得点者 (ジ)キムヒョヌン、大塚、ケンペス  (群)青木考太、瀬川
  

2014年5月3日土曜日

森本貴幸は確かに燃えていたが・・・(第10節ジュビロ)

  ちょっと古い話ですが、ジェフが初めてナビスコ杯で決勝に進出したときと相手がジュビロでした。Jリーグが始まって初めてのタイトル獲得を予感させる決勝戦をテレビの前でワクワクしながら見ていた記憶があります。当時最強の名をほしいままにしたドリームチーム「ジュビロ」の中盤には藤田・名波・奥・服部のカルテットが君臨してましたが、ジェフもマスロバル&スコルテンというワールドクラスの選手を攻守の中心に据えていて、そう簡単には力負けはしないだけの強さがありました。最終ラインには山口(智)がいました!

  「マスロバルのコンディションさえよければ勝てるかも!?」という期待も虚しく、やや集中力を欠いていたマスロバルにがっかりしたことをよく覚えています。川口というスピードのあるFWに先制点を取られて浮き足だったところを、さらに奥に追加点を決められて、集中が切れてしまい大量4失点を喫してボロ負けしました。当時のジェフは全てがマスロバル頼みだったので、コンディションがはっきりと悪いならばこれも仕方がないこでした。それにしても「もったいないな〜」当時はもう二度と「決勝」なんて舞台までやってこれないんじゃないか?とか思ったものでしたが。

  まだまだジュビロには勝てないな、あと10年もすれば勝てるようになるかなと思っていたら、数年後のYAMAHAスタジアムでは村井の電光石火のアーリークロスに崔龍洙が合わせるという、強烈な攻撃力でジュビロをねじ伏せたのにはびっくりしました。あのころの外国人プレーヤーは頼りになる存在でした。あの頃はジェフが連れてくる外国人はみな優秀でしたが・・・。

  さて久々なジュビロ戦を迎えました。相手は・・・やはりキラ星の如く豪華メンバー。ブラジルW杯への選出もありそうな、駒野・伊野波。ついこの前まで代表のエースだった前田。南アフリカW杯で不動のレギュラーだった松井(森本は全試合ベンチだったな・・・)。さらによく動くブラジル人と韓国人による助っ人。今のジェフではジャイールと米倉を加えても太刀打ちできないくらいの豪華メンバーです。

  2トップになってから、ケンペスが下がってボールを受けるシーンが目立ちましたが、同時のそこでロストすることが多いなぁ・・・。ボールを止めてから次の動きへの動作が緩慢で、相手にすぐに囲まれてしまいます。同じことが田中にも言えて、リズムをつくりたいところでミスが出て相手ペースになってしまうのが気になります。この辺がジェフの現在の最大の弱み。

  ただ最前線に位置していた森本は、味方の度重なるボールロストにイライラしつつも、攻撃を分厚くするためにバイタルエリアで必死に体を張って、奪われたらすぐに奪い返すという相手DFが嫌がるプレーが出来ていたように思います。クロスから2回ほどいいヘディングシュートもありましたし、1点でも奪えていたら良かったのですが・・・。

  さて次節はザスパクサツ群馬ですね。泥沼の5連敗中ですが、連敗ストップを期して強い気持ちで襲いかかってくることでしょう。ジェフにとってはなかなか嫌なタイミングでの対戦ですね。とりあえず序盤から猛攻を仕掛けてさっさとゴールを奪ってしまえばいいわけですが、兵働・谷澤は連戦の疲れがあるでしょうし、トレーニングゲームに復帰したナムスンウのいきなりのスタメン抜擢もあるかもしれません。ナムとの連携に優れる大塚をスタメンで使って森本と2トップなんてどうでしょうか?

ジュビロ2−1ジェフ  得点者 ポポ・前田(ジュ)